今日,私たちが直面する多くの科学技術的問題には,ネットワーク構造が内在し,複数のエージェントがこのネットワークを介して互いに作用し合う様相を呈しています.このようなシステムはマルチエージェントシステムと呼ばれており,その応用分野は,物理学,システム生物学,ビークルのフォーメーション,ロボット協調制御,センサネットワーク,分散コンピューティングなど多岐にわたります.近年,制御分野でマルチエージェントシステムに関する研究が活発に行なわれていますが,マルチエージェントシステムのダイナミクスをより深く理解し,新しい制御手法を確立していくためには,各分野にまたがった幅広い視点からのアプローチおよびそれらの融合が求められています.このような背景の下,本テーマセッションでは,マルチエージェントシステム制御とその応用に関する研究発表を制御分野のみならず様々な分野から募集いたします.
主なキーワードを下記に列挙します.これらの枠にとらわれない研究トピックも歓迎いたします.
近年,計算機の各構成要素の性能が飛躍的に向上しており,各構成要素の機能を効率的に統合管理するためのシステム設計の重要性が高まっている.計算機科学では,計算機を数理モデル化して,計算機の特徴を数学的に分析する(理論計算機科学と呼ばれる)研究分野がある.一方,システム制御分野では,制御対象の振る舞いを所望通りに制御することを目的として,制御対象を数理モデル化して,その数理モデルの解の性質(安定性・最適性・ロバスト性など)が研究されている.理論計算機科学とシステム制御の研究では共通する方向性が存在するが,システム制御分野で従来扱われてきた数理モデルは計算機の挙動を十分適切に表現するためのモデルではなかったため,双方の研究分野が情報交換したり知見を共有するには隔たりがあった.しかし,近年は,計算機がもつ性質に特化した数理モデルを構築し,そのシステムモデルに対して制御系を解析する研究が進展されている.例えば,システムの離散事象化・タスクスケジューリング・タスクの分散化・通信のネットワーク化・信号の量子化・誤信号の検知などに関する研究が挙げられる.本テーマセッションでは,計算機科学とシステム制御の複合領域に関わるさまざまな理論または応用の研究成果を含む講演発表を募集します。皆さまの積極的なご参加と研究発表をお願い致します.
21世紀に入り,システム最適化や意思決定法は,生産・流通システム,通信・制御工学,金融工学などの分野だけでなく,環境学,政治学,分子生物学などの領域でも利用されてきています.これは,この 20年間における様々な手法の開発と,計算機パワーの増大により,20世紀には不可能と考えられていた大規模かつ複雑な問題が解けるようになって来たためだといえます.また,それらの発展と共に,現実社会に現れる応用問題のモデル化技術も向上してきました.今後も,環境,高齢化など 21 世紀型の諸問題の解決手法として,システム最適化や意思決定法のニーズは,さらに増していくものと考えられます.
本テーマセッションでは,システム最適化と意思決定に関する理論,手法,応用およびそれらに関連するさまざまな研究を募集し,この分野の近年の動向を把握できる場を提供したいと考えています.
過酷かつ変動的な環境で生きる生物の多くは,リアルタイムに,あるいは世代交代を経て柔軟に環境に適応する機能を備えています.またその適応機能がしばしば非常に単純な知能や情報処理によって発現されていることも注目に値します.一方人工の機械システムの設計において,想定外の状況にも対応し得る,頑健かつ柔軟な機能を実現するためには,生物のもつこのような環境適応機能に学ぶことが多くあります.本テーマセッションでは,生物のもつ環境認識と適応機能の解明,ならびにその人工物設計への応用に関する工学的・数理的アプローチについて討論を行います.広く生物系における力学的現象,機械系における知能的現象・設計を扱った研究を歓迎します.皆様の積極的なご寄稿をお待ちしております.
近年,サステイナビリティ(持続可能性)が重要なキーワードとして認識されており,地球環境のサステイナビリティだけではなく,人間社会,産業および企業のサステイナビリティも重要な課題と認識され,製品および生産システムのライフサイクルまで考慮して,自然環境,社会環境などの変化に対応することができる柔軟な生産システム/FA技術が議論されるようになりました.その実現と取組みについては,知的メカトロニクス/複合工作機械,自律ロボット,3D-CAD/CAMや画像処理,といった個々の要素技術と,製品企画・設計から,受注,製造,流通ロジスティクスを含めたモノや情報の流れの計画/管理システム,トータルな最適化を実現するための自律分散システムやスケジューリングなどのシステム化技術,トレーサビリティ・セキュリティ向上のための情報技術が重要となります.さらに大きな視点からは,グローバル生産を実現するための経営組織や経済活動を活性化するためのシステム工学アプローチなども進められています.本テーマセッションでは,持続可能な社会を実現するために不可欠な生産システム/FA技術に関わるさまざまな研究開発の成果を含む講演発表を募集します.皆様の積極的なご参加と研究発表をお願いいたします.
動的に変化する環境の下での自律的な秩序形成・機能発現のための進化・適応能力を有するシステムは「創発システム」と呼ばれています.代表的な研究として,ロボットの知覚・行動・身体性の設計,マルチエージェント・自律分散システムの解析・設計,人間を含む異種の複数エージェントによるコラボレーション設計,経済活動の仮想社会シミュレーションなどが挙げられます.研究対象はますます広くなり,電力ネットワーク設計や鉄道荷役計画,キー配列最適化,感情推定などにも及んでいます.さらに創発システムを形作る計算知能技術,学習・進化・適応の計算モデルの発展も著しく,追加学習,マルチタスク学習,移転学習,多目的最適化などが研究されています.本テーマセッションでは,創発システムと計算知能の基礎理論・要素技術から適用事例まで,幅広い研究発表を募集します.奮ってご応募いただけますようお願い申し上げます.
手先効果器(エンドエフェクタ)に対し, アクチュエータが並列に配置されている機械システムはパラレルメカニズムあるいはパラレルリンクメカニズムと呼ばれています. 一般に, このようなメカニズムには高出力・高剛性・高精度といった特徴が期待され, いわ ゆる典型的な産業用ロボットアームに代表されるシリアルリンクメカニズムとは異なる運動学的・力学的特性を持っています. その本格的な研究・開発は1960年代のStewartプラットフォームの頃から始められ, フライトシミュレータや移動プラットフォームの基本メカニズム等として広く利用されるようになっています. 一口にパラレルメカニズムといっても様々な種類があります. アクチュエータの種類では回転関節を用いるものや直動関節を用いるもの, その両方を用いるものがあります. パラレルメカニズムを多段に接続して冗長自由度を持つようにしたものや, 不静定な構造を持つような機構構成のものも存在します. 例えば複数のロボットアームで単一の物体をハンドリングする問題は, このような不静定な機構を持つパラレルメカニズムの一つの様態として扱うこともできるでしょう. 可変長のトラス部材によって構成される可変形状トラスもパラレルメカニズムの一種と言うことができます. また, 剛体リンクではなくワイヤやケーブル等の柔軟リンクによって構成されるパラレルメカニズムの研究も行われているようです. 本テーマセッションでは, パラレルメカニズムとその周辺分野に関する幅広い研究発表を募集します. 皆様の積極的な参加をお願いいたします.